後頭前頭筋の収縮による慢性緊張型頭痛のしくみ

後頭前頭筋はどのように収縮するでしょうか?

後頭前頭筋は、提舌筋・上眼瞼挙筋と同じく、速筋線維と遅筋線維で構成されていますが、筋紡錘を内在しません。
前頭筋は随意的にも不随意的にも収縮するので、速筋線維と遅筋線維で構成されていますが、後頭筋はほとんどの人が不随意的にしか収縮しないので、遅筋線維で構成されていると考えられます。

前頭筋の速筋線維を収縮させる顔面神経核には、両側の運動野からの入力があります。従って、前頭筋の速筋線維を随意的に収縮させて、眉毛を挙上しようとすると、両側が対称的に持ち上がります。

前頭筋や後頭筋の遅筋線維を収縮させるには、上眼瞼挙筋でミュラー筋機械受容器を伸展させる必要があるのです。

正面視すると、上眼瞼挙筋速筋線維の収縮で、ミュラー筋機械受容器を軽く伸展されて、上眼瞼挙筋の遅筋線維が反射的に収縮し眼瞼が挙上します。

30度上方視すると、ミュラー筋機械受容器が強く伸展されて、上眼瞼挙筋の遅筋線維が反射的に収縮が増し、眼瞼の挙上が増加すると同時に、前頭筋が一過性に反射的に収縮して、眉毛が挙上されます。

60度上方視すると、ミュラー筋機械受容器がさらに強く伸展されて、上眼瞼挙筋の遅筋線維が反射的に収縮がさらに増し、眼瞼の挙上が増加すると同時に、後頭前頭筋が持続性に反射的に収縮して、眉毛がさらに挙上されます。

まぶたを擦る癖で、腱膜が瞼板より外れている腱膜性眼瞼下垂の人は、正面視でも、30度上方視あるいは60度上方視のようにミュラー筋機械受容器が強く伸展されて、前頭筋が一過性に反射的に収縮して眉毛が挙上されているか、後頭前頭筋が持続性に反射的に収縮して、眉毛がさらに挙上されています。軽く閉瞼してみて、眉毛が下がると一過性の反射的収縮で、眉毛が下がらないのは持続性に反射的収縮なのです。後者の場合、後頭前頭筋の緊張型頭痛や片頭痛になる場合があります。


形成外科診療ガイドライン、頭頸部・顔面疾患、第Ⅲ編 眼瞼下垂症(金原出版社 2015年4月10日発行)によると、

CQ18 後頭前頭筋収縮による緊張型頭痛の治療に有効か?

推奨 腱膜性眼瞼下垂症による後頭前頭筋収縮が原因である緊張型頭痛の治療に、眼瞼下垂症手術は有効である(グレードC1)。

根拠・解説 腱膜性眼瞼下垂症患者は、眉毛挙上により視野を維持するため、後頭前頭筋が常に収縮している傾向がある[1]。眼瞼下垂症手術により眉毛挙上せずに開瞼ができるようになると、後頭前頭筋収縮は低下する[2,3]。腱膜性眼瞼下垂症による後頭前頭筋が原因である緊張型頭痛では、眼瞼下垂症手術により緊張型頭痛が軽減することが報告されている[3]。

今後の課題 腱膜性眼瞼下垂症における緊張型頭痛の診断基準および治療指針を作成する必要がある。    

参考文献
1)Matsuo K, Osada Y, Ban R. Electrical stimulation to the trigeminal proprioceptive fibres that innervate the mechanoreceptors in Müller's muscle induces involuntary reflex contraction of the frontalis muscles. J Plast Surg Hand Surg. 2013;47:14-20.




外れている腱膜を瞼板に縫合固定することによって、ミュラー筋機械受容器が伸展されにくなると、後頭前頭筋の遅筋線維の反射的・不随意的収縮を減らすと、後頭前頭筋収縮による緊張型頭痛は改善することができる。
Comments