まぶたを開けるしくみ

 腕を前方に持ち上げるとき、自分の意思で持ち上げられるけれど、ずっと勝手に無意識に上げていられません。

 まぶたを開けるとき、自分の意志で開くし、ずっと勝手に無意識に開いてられます。また、まばたきをして、時々閉じます。明らかに通常の骨格筋の神経支配と異なります。

 通常の骨格筋は、速筋線維と遅筋線維でできた混合筋で、筋内に筋紡錘があります。右図の、咀嚼筋はその例です。

 そして、速筋線維の神経筋単位と、遅筋線維の神経筋単位は異なるのです。

下顎反射(かがくはんしゃ)とは、軽く口を開いた状態で、下口唇のすぐ下にある下顎の中央を軽く叩くと、咀嚼筋の筋紡錘が伸展されて、生じた三叉神経固有感覚が、咀嚼筋の遅筋線維を不随意的・反射的に収縮させて、一旦、口が閉じる反射です。

 随意的に咀嚼筋の速筋線維を収縮させようとすると(α神経単位)、同時に筋紡錘の錘内筋を収縮させ(γ神経単位)、筋紡錘の機械受容器が伸展されて、生じた三叉神経固有感覚が、咀嚼筋の遅筋線維を反射的不随意的に収縮させます(αーγ連関と言います)。上位中枢より、γ線維が刺激されてで筋紡錘内の紡錘筋が収縮しても、筋紡錘の機械受容器の神経が伸展され、生じた固有感覚が遅筋線維を収縮させるのです。

 咀嚼筋の遅筋線維は特殊で、筋紡錘の機械受容器に加えて、歯をかみしめて歯根膜機械受容器が伸展されて生じた三叉神経固有感覚が、咀嚼筋の遅筋線維を不随意的・反射的に収縮させます(歯根膜咬筋反射)。固いものを咬むと、強く咀嚼筋の遅筋線維が収縮し、軟らかいものを咬むと、弱く咀嚼筋の遅筋線維が収縮します。一旦、噛みしめると、ずっと噛みしめていられるのもこの反射です。ずっと噛みしめて起きる咬筋肥大症は遅筋線維が肥大し、下顎骨の骨切り術で三叉神経下顎枝の損傷が起きると咬筋が萎縮します。

提舌筋は、速筋線維と遅筋線維で構成されますが、筋紡錘を内在しません。提舌筋で歯を外側に押し、歯根膜機械受容器を伸展しされて生じた三叉神経固有感覚が、提舌筋の遅筋線維を不随意的・反射的に収縮させます。一旦、歯根膜機械受容器を舌押しすると、ずっと舌押し続けられるのです。
 視点を変えると、咀嚼筋が収縮する目的は、歯をかみしめることです。歯根膜機械受容器を含んだ歯が効果器に相当するので、その中に自分が収縮するpositive feed backのメカニズムがあるのです。

 同じこと、提舌筋にも起こります。提舌筋が収縮する目的は、提舌だけでなく、舌で歯を外側に押すことなのです。歯根膜機械受容器を含んだ歯が効果器に相当するので、その中に自分が収縮するpositive feed backのメカニズムがあるのです。

外眼筋の上直筋は、何種類もの速筋線維で構成でされてます。眼球を動かす眼球層と、動かした眼球の位置を維持する眼窩層に分かれています。これらは、骨格筋ですが、ミトコンドリアが多く、普通の骨格筋の速筋線維に較べて、長く収縮させていても疲れないのです。

 眼球は眼窩脂肪の中に浮かんでいるので、眼球を動かす外眼筋の眼球層と、動かした眼球の位置を維持する眼窩層に分業できています。

 上眼瞼挙筋は、速筋線維と遅筋線維で構成されますが、筋紡錘を内在しません。この速筋線維は、咀嚼筋・提舌筋などの骨格筋の速筋線維とは異なり、上直筋の眼球層と同じミトコンドリアの多い疲れない速筋線維より発生します。上眼瞼挙筋の遅筋線維は、骨格筋の遅筋線維と同じなので、筋紡錘や歯根膜機械受容器などの伸展で生じる固有感覚で反射的に収縮するのです。

 上眼瞼挙筋の速筋線維が、上直筋の眼球層と同期して、内側縦束吻側間質核rostral interstitial nucleus of MLF(riMLF)の興奮、動眼神経核を経由して収縮します。すると、ミュラー筋機械受容器が伸展されて、三叉神経固有感覚が生じると、上眼瞼挙筋遅筋線維が反射的に収縮するのです。そうすると、上眼瞼挙筋が収縮する目的は、腱膜やミュラー筋を伸展して、瞼板を挙上して、開瞼することなのです。ミュラー筋機械受容器を含んだミュラー筋が効果器に相当するので、その中に自分が収縮するpositive feed backのメカニズムがあるのです。一旦、ミュラー筋機械受容器を伸展すると、ずっと上眼瞼挙筋遅筋線維は収縮し続けられるのです。
 しかし、開瞼している間、上眼瞼挙筋の遅筋線維の反射的収縮だけで、開瞼は維持されているかというと、そうではありません。外眼筋の収縮が抵抗の少ない眼窩脂肪の中で行われているの較べて、上眼瞼は弾力性や重力があるので、開瞼している間中、上眼瞼挙筋速筋線維の随意的収縮と、上眼瞼挙筋の遅筋線維の反射的(不随意的)収縮があることが報告されています・

 眼精疲労は、外眼筋や上眼瞼挙筋のミトコンドリアの多くて疲れない速筋線維の収縮でなく、上眼瞼挙筋遅筋線維の収縮が原因とも考えられます。眼精疲労を軽減させるために、下方視で、上眼瞼挙筋遅筋線維を弛緩させて、読書する人も多くいます。









Comments